ここ4ヶ月ほど国内中波DXにはまった。元々は海外中波を聞こうと思っていたのだが、国内局の混信でよく聞こえない。そこで国内局が出ていない時間を選んで聞いてみようと考えた。つまり本来の目的を達成するのに「敵を知る」ために、放送時間をいろいろ調べていたのであった。ところがそのうちにその「敵」自体に関心が移ってきた。「この局はどこの局なのだろう」と。そうしているうちに、国内局でも受信の難しそうな局にはトライしてみたいと考えるようになった。難しいところ-距離的には沖縄である。そこでまずは沖縄にターゲットを絞ってみた。
沖縄には2つの中波局が存在する。738の琉球放送と864のラジオ沖縄である。どちらも他の国内局と混信するチャンネルだが、738の方が混信が少ないのでまずはこちらから狙ってみた。このチャンネルは北日本放送の方が強力でカバーされてしまうので、同局のいない時間を狙うしかない。そうすると必然的に日曜深夜(月曜未明)の放送終了時に限定される。ということで1:30前に狙ってみると、国内局はいないがKBSが強力に居座っている。しかし耳を澄ますと・・・その裏で弱々しく日本語が聞こえてくる。そしてまもなく終了音楽とIDが出て同局であることが確認できた。嬉しかったし、ちょっとしたDX局が受信できた喜びがあった。
次に864であるが、同波には国内局だけで6局も出ている。時間帯を選んで聞かないと、完全にブロックされてしまう。そこで他局不在の時間がないかどうか調べるために、「ラジオ番組表」を買ってくる。ところが何を見間違えたのか同局が単独になる時間帯はないものと思ってしまい、混信が最小になるであろう放送終了時に狙ったが、ナイターの影響もあってか国内局だらけであり、影も形も拝めなかった。
そこでもう一度「ラジオ番組表」を眺めてみると、同波で一番最初に開始する局はラジオ沖縄だったのである。そう、同局単独になる時間帯があったのである。そこで放送開始時にリトライすると、4:50の放送開始に先立って4:44から民謡が流れ、もしかしたらと構える。しかしS3と強力なので、同局ではないのではないかと思ってIDを待つ。するとまもなく同局のコールサインとIDが流れる。これには驚いた。何だ、あっさり聞こえるじゃないか-そう思っていた次の瞬間、4:52には同波の他局のキャリアが出てきて、ラジオ沖縄はあっという間にカバーされてしまった。ということでラジオ沖縄は聞こえるが、そのチャンスは一週間でたった8分間である。
しかし実は受信が最も難しいのは沖縄ではなかった。そう、障害は「距離」よりも「混信」なのであった。関東地方で受信が困難なのは、九州の4局-宮崎放送、熊本放送、長崎放送、大分放送-である。この4局を総称して私は「九州カルテット」と名付けたが、これがなかなか難物である。
周波数表を眺めるとすぐ分かるのだが、九州と東北の5kW局は同一周波数を使用している。936は宮崎と秋田、1197は熊本(10kW)と東北ではないが北関東の茨城、1233は長崎と青森、1098は大分と福島といった具合である。要は少ない周波数を混信しないように有効活用しようということなのだろうが、関東では概して東北局が強く、九州局は時間がずれない限り潰されてしまう。それがこのカルテットなのである。そのことに気付き俄然ファイトが沸いてきて、このカルテット制覇の挑戦が始まることになった。
その中でも一番受信しやすかったのは宮崎だった。これはライバルが秋田だけなので、これに混信して弱く聞こえてくることがある。0時に正時のIDが取れてまず1局。次は熊本である。この局は日曜深夜の終了が茨城よりも遅いので楽勝かと思いきや、北海道のSTVラジオが強くて結構聞こえないのである。それでも1:30の終了アナウンスは聞き取ることができた。これで2局。やはり難しいのは長崎、そして大分である。長崎は信号が弱く、kWに満たない和歌山にすら負けそうである。おまけに1242のニッポン放送のサイドが強い。キツかったが、月曜朝の放送開始時に弱々しい開始アナウンスを聞くことができた。そして最後に残ったのは大分放送であった。この周波数はラジオ福島と信越放送が一騎打ちをしている上に、更にKBSが参戦してくるのだ。大分の付け入る隙はなく、なかなか受信できなかった。時折それらしき影は踏むが、IDまでは行き着けない。しかしここも月曜5時の放送開始時に大混信の中、弱々しい開始アナをとることができた。ふぅーっ、これで制覇だ。
国内民放中波DXなんて海外DXから比べれば遊びだと思っていたが、なかなかどうして長崎・大分は結構難易度が高いし、どう攻略するか戦略を立て実行するのが面白かった。既に成功した方のアドバイスは「夕刻を狙え」であったり「カーラジオで受信せよ(感度がいいらしい)」であったりでなかなか面白かった。「ラジオ番組表」で他局とぶつからない時間を探し出して受信したりとか、それはそれは楽しいゲームであった。
海外DXだけをやっていると、コンディションが悪かったり返信がこなかったりするとスランプに陥ってしまう。そう、確実に返信が来るのも国内DXのいいところである。国内旅行をしているような気分になれるのも楽しみのひとつである。
多くの方にお奨めしたい遊びである。早速始めてみては如何か?
(Oct.13,2003)