かつて自分が中学生のとき(’78 12/31)に親に買ってもらい、高校入学後QRTするまで愛用した往年の名機YAESU FRG-7は昨年末の20年振りの復活の段階では残念ながら故障していた。それはそうだ。電源も入れずに20年間も押入れの中に放っておけば、受信機だっておかしくなってしまうだろう。電源は入るのだがボリュームにガリが発生している。またDバンド(11MHz以上)はほとんど聞こえなくなっていた。そしてしばらくして再度電源を入れたときには、今度は通電しているという感触さえなくなってしまった。
記憶が定かではないがもちろん自分でももらった小遣いは貯めて、その上で足りない分を親に補填してもらってやっと買えたマシンである(確か売価¥44,800であったと思う)。今でこそサラリーでそれほど苦もなく買えてしまう金額だが、当時のその金額は大金である。まああまり物をねだったりしない私がどうしても欲しいと言っていたので、無理をしてでも買ってやろうと思ったのだと思う。自分の青春の思い出とそんな親の気持ちを思うと、売ったりとか捨てたりすることは考えられず、高くつくことはわかっているのだがそれでも修理して復活させようと思ったのである。
最初は定石通りメーカーであるバーテックススタンダード社に問い合わせた。しかしながら古いことを理由に部品が無いかもしれない、高くつく(2~3万円)かもしれない、仮に修理できても昔ほどのパフォーマンスが出ないかもしれないと返答が帰ってきた。どうしたものかと考えあぐねていたときに目にしたのが、やはりインターネット。昔のBCLラジオを展示しているサイトがあり、よく読んでいくと「BCLラジオの修理引き受けます」とある。見れば相当数の修理をこなしているようであり、種類も実に多様で、この人ならFRG-7を復活させてくれるのではないかという予感がした。
とは言え商売でやっているのではなくあくまでも趣味の延長として善意でやっているという感が強く、「フィーリングが合わなかったらどうしよう」とか「やたら高かったらどうしよう」とかいう一抹の不安もあった。でもとりあえず相談してみようとメールで問い合わせてみた。その中で前述のような自分の思い入れを書いて、是非面倒を見て欲しいと切に訴えかけた。
返事はすぐもらえて「いいものを持っていますね」とあり気持ちはそれなりに通じたのではないかと思ったが「じゃあ引き受けましょう」とも書いておらず、様子を見られているのかなという気がした。そして3回ぐらいメールをやり取りして、「ではとりあえず挑戦してみましょう」と言ってもらえた。しかしながら本当に直るのか、またいくらかかるのかはこの段階ではわからない。しかも着手できるのは仕事の関係で1ヵ月後とのこと。いずれにしても待つしか方法は無い。
そしてやっとその時期が来て、丁寧に梱包して一応礼儀と思って電話で一言挨拶をする。年配とは思ったが声はそれほど老けてはおらず、普通のおじさんといった感じで飄々と応じてくれる。発送する際に念のためにと思いFRG-7の取説と回路図、そして改造個所であるNarrow Filterの改造記事を同封する。ただ「改造してます」と書き加えるのを忘れてしまったので、メールでその旨伝える。それに対し同氏より返信があり改造についてはあまり感心しないご様子。しかし箱が大きく置き場も無いので、一両日中に目処をつけて返送するとのこと。そしてその日の午後には「発送しました」との連絡。早い!感度もICF5900より良い(何故ICF5900との比較なのか?)と書き添えてある。
楽しみにして翌日自宅へ帰って、真っ先にFRG-7に駆け寄る。すぐにセッティングしいざ電源をONにする。すると・・・復活した!間違いなく復活した。DX局がしっかり聞こえる。NRD535とあまり変わらない強度でRRI各局(Jambi、Ternate、Pontianakなど)が入感する。Narrow Filterの切れ味も相変わらず良い。確かにFRG-7は元気になったのである。
一抹の不安があった(もちろん予算を超えるようであったら取りやめをすると言ってあったが)代金の方も無事予算内に収めてくれた。こうして自分の宝物は完全に蘇ったのである。聞けばFRG-7は米国でも極めてビンテージ度の高いレシーバーであると評価されているとのことである。単なる飾りでなく実用上も非常に能力は高いと思う。せっかく復活したのだからこれからは大事に使い、これからも続くBCLライフの中で役立てていきたいと思う。
※上記修理に際してお世話になったラジオ工房(内尾悟)さんのサイトはこちらです。FRG-7の修理についてはこちらに掲載頂いています。修理が終わった後に見学にお邪魔しましたが、懐かしいラジオが山のように積んでありまさに宝の山!といった感じでとても楽しい空間でした。