かねてから企画していた千葉県太東崎ペディを敢行。今回のメンバーはS師と自分。最高のロケーションであることは分かっており、何人かを誘ったところ皆来たがっていたがいずれも仕事等で来れず、2人でやるかということになったのである。
今回の狙いはズバリ「トンガ」である。98,99年と2年連続でトンガを取ったS師だが、それ以降は受信できておらず、元祖「トンガ男」の意地に賭けて、久々の受信を心に期していたようであった。自分はもちろん未受信であり、トンガなど夢のまた夢。今回も「狙ってきます!」などと公言はしているものの、そんな簡単には受信できないだろうと半信半疑である。
13:00市川塩浜集合ということで、11:30過ぎに家を出る。若干混んだが、ほぼオンタイムに着く。S師も12:57着とのことだったので、お互いに時間厳守でなかなか良い。その後東関道~東金道路~九十九里道路と乗り継いで現地へ。途中で非常に面白いものを発見したのだが、それは「珍来」というラーメン屋であった。「珍局到来!」みたいで非常に縁起が良い。2人で大受けし、その名に吉兆を感じつつハイな気分で現地へ向かう。
現地には14:30頃に着いたので、市川からは約1.5時間であった。まずは遅い昼飯を食べようということで、S師が以前も行ったことがあるというボリューム満点の定食屋に入る。何故か二人揃って焼肉メニューを注文。九十九里まで行ったのに海の幸でなくて無粋だが、遅い昼飯で2人ともかなり腹が減っていたせいだろう。実際出てきた料理は本当にボリューム満点で、これなら晩飯は殆ど食べなくても良さそうだ。
さていよいよ本日の会場、灯台横の公園に向かう。太平洋を一望できる高台で、これは大変絶景だ。DX的にもこれなら電波が来ない筈がないと確信する。私はビールを飲みながら、その光景にしばし見とれる。S師はその間、お約束のパノラマ撮影だ(笑)。
16時過ぎに駐車場の一角に陣取り、仮設シャックとアンテナを設置する。仮設シャックとは、いつものレジャーテーブルを置いただけである。アンテナはK9AYだが、これが実に素晴らしい。まずはその設置の簡単さ。駐車場の柵を利用したが、そのせいもあって南東-北西方向のアンテナが10分足らずで張れてしまう。シャックの方も7030が2台とプリアンプ、分配器を置いて簡単に終了。あっという間の早業である。この他師は今回初登場の秘密兵器「オーディオフィルタ」を設置する。これはS師謹製であり、帯域が自由に可変できるというクリフィルいらずの優れもの。実際に受信音を聞かせてもらったが、7030にはBWCがないので連続的に帯域が切り替えられるのは非常に良い。これは今後絶対作りたいと思う。
ところで我々2人は実に堂々とこの設営作業を行ったが、訪れる観光客は何事かと我々の様子が気になるようで、中には何をしているのかと尋ねる人もいる。そこで我々は怪しまれまいと無理やり微笑んで、「海外の放送を聞いているんです」と堂々と答える。途中警官もバイクに乗ってやってきたが、別に我々を見ても何も言わずに去って行った。やっぱり堂々としていることが大切だ(笑)。
さて肝心の受信だが、16時台はもちろん17時を回ってもGuamさえ聞こえない状況だったのでこれはどうかなと思っていたが、話題のPNG局Wantok Radio Lightを聞いたりしてからもう一度中波に戻ってくると、今度はKCNM、KGUMなどが聞こえ出す。これらは常連の筈なのだが、受信するのは結構久しぶりだったりする。間もなく630/1548のABCも超強力になっていく。
いつもはっきりした指向性が出なかったりして苦労するK9AYは今日はバッチリ。最初に954/JOKRで実験すると、ピークとナルの差が20dBほど取れており、よく切れていた。師曰く「コマネチ並み(古い!)」である(笑)。実際の受信では567はスイッチの切り替えでKGUMとNHK札幌、702は2BLと北朝鮮が反転する。この素晴らしい指向性のお陰で、ついに南太平洋は爆発を迎えたのである。
師はいろんなチャンネルを聞きながらも、常に1017はワッチし続けていて、ついになにやら癖のある、のんびりした男性トークが聞こえてきたのを捉える。クリケットか何かのスポーツ中継で、18時正時を迎えてもアナウンスは出ず。師曰く番組の雰囲気、アナウンサーの喋り方等、過去受信のトンガに酷似しており、ほぼ間違いないと見てよいのではないかとのコメントであった。「おお、これがトンガか!」と感激しながら、IDを狙うべくMDを回し続ける。信号はかなり強力だったので、IDが出ていれば間違いなく確認できたであろう。残念だ。
18時台は、短いながらも一気にピークを迎える。9kHzセパのチャンネルを上から下まで何度か行ったり来たりすると、いくつかのチャンネルで、国内局の裏に英語が聞こえる。630とのパラチェックでABCであることが分かったのが747、855、891、1008など。この他民放では846/4EL、990/4ROが取れる。4ROのIDが取れた瞬間は思わず歓喜のガッツポーズ!この1局だけでもここに来た甲斐があったのではないかと思う。この他1035のSIBCが強力で、普段は短波とパラチェックして辛うじて確認できるといった感じだが、この日は単独でも十分確認できる強度であった。それと同じく1035でカンツォーネを流す局。これはニュージーランドではないかとS師は推測しておられたが、この夜(翌朝未明)に大先輩のG氏が2ZBを確認なさってそれが証明された。
19時を回ると早くもピークが過ぎ、信号強度が落ち始める。また外気も涼しく、というか結構寒くなってきた。師匠は相変わらずトンガゲットに執念を燃やしており、20:10に終了するのでそれを待とうとのことである。ところが残念ながらその時間には終了しなかった。ここで終了すればアナウンスとか国歌とかが流れて決定的になったのだろうが・・・
そして名残惜しくも撤収し、また東金経由で東京方面に向かう。行きに発見した「珍来」はそのネオンサインが輝いていたので有難く合掌し、ご真影をデジカメに収めて帰る。いい年をして大馬鹿である(笑)。22:30に市川塩浜、23:30には自宅に帰着する。
今回はK9AYで国内局をバックに追いやって、その裏の南方局を受信するというスリリングな体験をした。私自身はこれまでのペディではあまりしなかった経験である。しかも設営時間10分足らず、製作費2,000円ほどのK9AYで成し遂げたところに大いなる意義があると思っている。ペディはもっともっと効率化できる。我々忙しい世代も聞こえないと諦めず、工夫と効率と密度で勝負して、大いにDXに励んでいきたい。
(May.31,2005)