火をつけたのは今年1月に読んだDialkid氏のHPであった。氏がその日記の中で、「デジタル周波数カウンタの自作を研究している」と書いておられたのを読んで、自分の中に「あ、自分も作りたい!」という気持ちが芽生えているのを感じた。
今でこそちょっと気の利いたラジオは全てデジタル表示だが(マイカーのラジオでさえデジタル)、その昔は手探り受信であった。自分の原体験としてこれがあるので、直読への憧れは激しいものがあった。一番の憧れはYAESUのFR-101DDであったが当時18万円であり、これは買えるはずもない。その後メインダイヤル+スプレッドダイヤルの組み合わせにより、アナログで10kHzまで読めるようになった(1975年スカイセンサー5900)ことは画期的なことであり、自分もそれに飛びついた1人である。しかしその2年後にプロシード2800で1kHz直読デジタル表示が登場して、その優位性はあっさり崩れてしまったのであるが。
プロシードは自分の買える範囲の現実的なデジタル機であり、或いは最も憧れた受信機だったかも知れないということは以前も書いた。買える範囲とは言っても買えるのは1台なのだから、総合力で選ばざるを得ず、結果2台目のリグとして選ばれたのがFRG-7なのであった。残念ながらこれは10kHz直読のアナログ機であった。もちろん別途マーカーとかカウンタを買えばよいのだが、そんな物を買うくらいならもっとお金を貯めてデジタル機を買っていたであろう。そんな訳で中学時代のBCLはデジタルとは無縁のままで終わったのだった。
こうした「満たされなかった経験が、その後の行動を左右する」ことはよくある。メインリグを2台有している今、カウンタが必要かというと必然性は無い。そしてその必然性のないものを敢えて作ってFRG-7につけてやろうというのは贅沢以外の何ものでもない。合理的な理由はない。ただ作りたい、そして満たされなかった欲望を満たしてやりたいだけである。
さてDialkid氏のプランに共鳴したは良いが、氏自身が早くも暗礁に乗り上げていた。自作で必要となるICが、もう世の中に存在しないそうなのである。もっとも自分の場合、仮にICがあっても基板の作成でつまづきそうだが。秋葉原の秋月にキットがあったが、運悪く品切れでいつ再入荷するかが分からない状況であった。
そんな感じで八方ふさがりかなと思っていたら、ある日新展開が訪れた。あるBBSで、今尚販売されているデジタル周波数カウンタのキットが紹介されていたのを発見したのである。早速ネットで調べてみると確かに複数のタイプが売られていた。Kid氏に報告がてら「どれがいいでしょうかね」などと相談する。氏はその存在を知って喜んでおられて「液晶タイプは味気ないので、LEDタイプの方が雰囲気があって良いでしょう」というコメントを下さった。唯一心配なのは我がFRG-7がワドレーループという特殊な回路構成の受信機であること。確かその昔は周波数カウンタも、ワドレーに対応しているかいないかというのを明示して販売していた記憶がある。そこでこのキットのメーカーに対応するかどうか尋ねるが、メーカー自身はFRG-7を知らないので明確な回答を得られない。しかしHPの説明書きを読む範囲では対応しそうな気がする。まあ何とかなるだろうと高をくくって注文してしまうのがアバウトな自分らしいが(笑)。
届いて早速作り始める。ワドレーループはダウンカウンタになるので、その点だけ注意しながら工作を進める。ICの半田付けを始めとして細かい作業が多いので慎重に行う。ケースは丁度良いのを買ってきて加工するが、LEDがのぞく四角い穴を開けなければならないので、ついにハンドニブラを購入する。初めてにしてはまあまあきれいに開けられたのではないだろうか。
さてここまで来て暗雲が立ち込めてきた。このカウンタは「中間周波数が一定でないと使えない」ということが判明したのである(つーか、今頃判明するなっつーの(笑))。我がFRG-7はこれが可変である。ということは使えないのか・・・ まあFRG-7でダメならクーガ115につけるかなどと思っていたら、ここでDXerK氏より有難いアドバイスを頂戴した。それは「100kHz以下の桁の表示であれば問題ないのではないか」という内容であった。確かに、MHz単位までは自分で合わせる機構なので、その下の桁だけが表示できれば実用上何の問題もないのである。それをそっくりそのままメーカーに返すと、「それならば大丈夫」との回答であった。確かに大昔のカウンタも同じように100kHz以下の桁だけを表示するタイプのものもあった。この問題もクリアでほっとした。
カウンタが完成した後の作業はFRG-7からの出力である。「ピックアッププローブ」というのを作って、これに12Vを供給してやらなければならない。またFRG-7の筺体に穴を開けてBNCコネクタをつけるのだが、きれいに開けられるのか心配したが、こちらは意外とあっさり開けることができた。
カウンタ、信号の出力作業が完成し、これで動作すれば問題なかったのだが、残念ながらどこかで失敗したようで動作しなかった。その時点ではカウンタが悪いのか、局発からの出力に失敗しているのか、或いは両方とも失敗しているのか判断がつかなかった。しかしながらカウンタが意味不明な数字(文字)を表示していることから、少なくともカウンタはダメそうである。配線をチェックしたが、間違っている箇所は分からなかった。そこでしばらくしてから意を決して、メーカーの方にメールを送り、実費で修理して頂けないかと相談してみる。
するとメーカーの方は送料を負担してくれれば、特にあとはいらないと仰ってくれた。しかしさすがにそれも悪いので、いつかは手に入れるだろうと思っている9R-59Dのためにもう1台あっても良いと思い注文する。そうしてカウンターは修理されて無事帰ってきた。
そこでいざセットしてスイッチを入れるが・・・あれ、やはりダメだ。局発からの出力も誤っていたようである。間違っていたのは出力の地点か、ピックアップ回路か、或いはそれへの給電か?結局自分ではチェックできず、今度はハードに強い知人DXerのS師にすがることになった。ただ師も忙しくまたそんなに近所に住んでいる訳ではないので、そうやすやすとは教わるチャンスは見つからない。結局快諾頂いてから実際にチェックを頂いたのは、2ヶ月後のことであった。
このチェックでは2箇所の誤りが発見された。1つはピックアップ回路への給電のポイント。全然関係ないところから電気を取ろうとしていた。もう1つはピックアップ回路に使われているFETの向きの間違い。というか確認も何もせずに作っていて、私のデタラメ・アバウトぶりにはS師も呆れて苦笑しておられた(笑)。
さてその部分を修理してもらって、いざスイッチオン。すると見事成功!ダイヤルの動きに連動して周波数表示が変わる。やった!FRG-7は購入から25年の歳月を経て、ついに1kHz直読のマシンに変身したのであった。多くの方の善意の協力がなければ完成できなかったであろう。ここで改めてお礼を申し上げたい。
せっかく直読機になったのだから、この受信機が使える限りいろんな局を聞いてみたいと思っている。
参考①:ピックアッププローブ(バッファ回路)。FETの極性に注意が必要である。
参考②:写真中央下部から伸びる白い線が局発信号を取り出す線(赤枠内が出力ポイント)、同じく写真写真右下から中央部に向けて伸びる青い線が給電線(青枠内が給電ポイント)。
(Aug.23,2004)
(Updated on Feb.12,2007)