私がBCLに出会ったのは小学校5年生のときである。北京放送を偶然受信したのが一番最初であるが、これに先行して雑誌でBCL関連の記事を読んだのがそもそものきっかけであった。これは随想「出会い」のところでも書いたが、小学校の図書室で「子供の科学」の中の記事であったと記憶していた。BCL復活以来、きっかけを作ってくれたその記事の内容であるとか誰が書いたのかとかを確かめたいものだと漠然と思っていた。そんな思いが嵩じて、雑誌名と「ラジオを聞いてカードをもらおう」というタイトルだったという記憶を頼りに、ルーツ探しを始めてしまったのである。
最初トライしたのは子供の科学の発行元である「誠文堂新光社」にメールを出すことであった。或いはバックナンバーを閲覧させてもらえないかと思ったのであるが、HPのご意見欄に問い合わせ内容を書いて送ったにもかかわらず、遺憾にも返信はなしのつぶてであった。
そこで次に古本探しに重宝する「easyseek」(http://www.easyseek.net/)のページで検索する。すると可能性があると思われる1975年発行の号が出品されている。そこでこの出品者(古本屋)にメールを書き、「掲載されていたら必ず購入するので」と、上記タイトルの記事が掲載されている号がないかどうか調べてもらった。本屋の方は調べて下さったが、結果は残念ながら「該当なし」であった。あれ、75年じゃなかったか?それとも子供の科学じゃなかったのかな?いずれにしてもモノが出品されない限りここではこれ以上探しようがない。
最後に行き着いたのは公共の「図書館」に行くことであった。ここなら今でも置いてあるところが多いし、或いはバックナンバーも所蔵している可能性がある。そこでまず地元である神奈川県の県立図書館を調べた。今の時代はあらかじめインターネット経由でそれぞれの図書館の蔵書を検索することができる。検索結果によると県立図書館は2箇所あるが、一応バックナンバーを保有しているようである。しかし本当に「子供の科学」だったかどうかも、また掲載されていた号も分からない。そこでとりあえず行ってしまった方が早いだろうと、まずは桜木町にある図書館に出かけた。
このとき家族サービスを兼ねて同伴で行ったのがまずかった。2歳の娘がいては落ち着いて本探しなどできない。館内のパソコンで少し検索して、どうやら自然科学系の書籍はもうひとつの県立図書館である川崎の方が充実しているようだと知ると早々に立ち去って、みなとみらいの遊園地に行く羽目になる。
そこで後日改めて、今度は一人で川崎図書館に出かけた。早速司書の方に相談すると、「雑誌のバックナンバーの保存期間は1年だけ。桜木町の図書館にそこそこのバックナンバーがあるようだ。」と言われた。しまった!やっぱり桜木町だったのか。しかしよく聞くと60年代と80年代のものはあるらしいが、70年代のものは桜木町にもないらしい。仕方がないので諦めて、とは言えせっかく来たのだからと所蔵してあった「BCL用短波ラジオの作り方」他数冊の本を閲覧して帰る。
こんな過程を自分のHPのDiaryにアップしておいたら、知人DXerのT氏がメールをくれて、ご自身も関心があるとのことで調べて連絡をして下さった。それによると70年代を含めたバックナンバーは、東京の都立図書館にあるとのことであった。そこで時間ができ次第、そちらへ行くことにする。 梅雨の晴れ間を狙ってバイクを飛ばし、1時間強で着いたのは立川にある東京都立多摩図書館。着くやいなやすぐに司書の方に希望図書を伝える。75年でないことは分かっているので、子供の科学だとすれば74年が怪しい。そこで74年1年間のバックナンバーを請求すると、数分後に出してきてくれた。受け取るとすぐに目次を繰り始める。12月号から遡って11、10、9と見ていったところで、ついに見つけた。探していたあのタイトル「ラジオを聞いてカードをもらおう」は9月号にあったのだ!
慌ててそのページを開くと・・・間違いない、あの記事だ!自分をBCLワールドに誘ってくれた懐かしい記事と遂に再会したのである。タイトルもそうだったが、内容も大体自分の記憶の通りであった。わずか3ページの中にべリカードについて、受信報告書の書き方、SINPOコードのつけ方、日本向け日本語放送などが詰まっていた。
「これだこれだ!」とまずは懐かしく読んで、そして今度はこれを見失うまいとコピーサービスでコピーをしてもらう。落ち着いたところで、誰がこの記事を書いたのかを確認する。その人は・・・ああ、この方だったのか!その方は自分がBCLのバイブルとして文字通り擦り切れるまで読んだ「最新世界の放送局ガイド」の著者の板橋聰光氏であった。ということで自分の第一次BCL期は、全て板橋氏にきっかけを作って頂いていたことがはっきりした。深く感謝する他ない。 こうしてコピーを済ませ他のBCL関連の書籍を閲覧し、1時間ほどで図書館を辞す。
お蔭様で無事に探し物を発見することができたのだが、この一連の本探しゲームはなかなか面白かった。特に図書館めぐりは、こんな本もあるのかと驚いたし懐かしい本にも出会えて大変面白かった。皆さんも懐かしいあの一冊に出会いたければ、図書館でお探しになることをお勧めする次第である。
(Aug.2,2003)