BCLの楽しみのひとつにベリカード収集というものがある。各局ともにリスナーからの受信報告に対して確認のカード(レター)を発行してくれる。BCLブームの頃は、リスナーの目的はこれであった人が非常に多かったと言われている。そしてベリカードを数枚集めたらそれで満足し、BCLから離れてしまった方が多いようである。私もご多分に漏れず数局にはレポートを出して、実際にベリカードをもらった。しかし私の場合はその後の興味の対象はDXに移り、ベリカード集めにはあまり執着しなくなった。もちろん私とて欲しくない訳では無かったが、語学力の無い自分が放送内容を理解しそれをレポートに書くことなどできないと思い込んでいたためであった。カセットテープによる受信報告を受け付けてくれないものかと真剣に悩んだものである。しかし20年の中断を経て、様々な思い込みを乗り越え、私は幸いにもどこの言語の局でもためらわずにレポートが出せるようになったのである。

 復活までの20年間で、英語だけは多少は理解できるようになっていた。従って再開後に早速英語放送に対してレポートを書いてみようと思い、一番最初はVOAのSpecial Englishに対して、しかもメールで送った(何故かこれに対しては返信が来なかったが・・・)。ということで受信状態の良い英語放送を選んでレポートを出すようになり、主要各国の国際放送のベリはかなり集まってきた。

 次に英語以外での放送に対してもレポートを書いてみようと思った。英語以外の言語を勉強したのはスペイン語とドイツ語だが、共に挨拶レベルでとてもリスニングやライティングはできない。従ってこちらは一生縁が無いものと考えていたが、ある日ミーティングに出席したときにある方からインドネシアRRIの地方局のベリレターを見せて頂いた。非常に感心してどうやって聞き取ってどうやってレポートを書いたのか、率直に質問してみた。するとその方は「何を話しているかということは分からなくて当然。自分も分からない。しかし出たID、また放送内容がどんなものであったのか(話、スポーツ中継、音楽、歌)、アナウンサーや歌手の性別、曲がかかったのであればそのジャンルなど、『確認してもらう材料』なら書ける。またレポートを書く際に使用する言語は英語でよいところが多い。」と教えてくれた。これは目から鱗だった。なんだ、そんなので良かったのか!それなら俺にも書けるじゃないか。そう思って早速チャレンジすることになった。

 一番最初にチャレンジしたのはCyprusのCyprus B.C.。Cyprusにしたのに特に意味は無く、たまたまその頃によく聞いていたので、そこに出したに過ぎない。使用言語はギリシャ語である。そしてレポートを英語で書いて送って返信を待った。本当はCyprusが第3国語での放送に対するベリ取得第1号になる筈だったのだが、返信が滅茶苦茶早かったR.Denmark(デンマーク語)に抜かされ、第2号になった。これに自信をつけて、第3国語でも躊躇無く出せるようになった。

 次なる自分の先入観は「受信状態の悪い局のレポートは出せない」というものであった。いわゆるDX局は受信できても受信状態が良くなくまた受信時間も短い。これではレポートなど書ける筈がないと、最初から諦めていたのである。しかしこれに関しても、「短くても大丈夫」とのアドバイスを別の方から頂いた。DX局に対する初チャレンジは、今は無きSaipanの中波局KSAI。受信状態も今ひとつだったししかも言語も現地語が入ったりで、昔の自分ならばレポートのレの字も思いつかないような局であったが、これにも果敢にチャレンジして、閉局前のベリを取得することができた。

 それでは英語の通じない国に対するレポートはどうすればいいのか?ここまでくれば、さすがに自分も迷わなかった。「その国の言葉で書くだけである」と。もちろん世界的にも非常にマイナーな国の言語では書き様が無いが、メジャーな国の言語であればレポートの雛型くらいは手に入るし、大半の国はそれで使えるはずである。例えば中南米であればスペイン語とポルトガル語、アフリカであればフランス語である。これらの雛型は、日本BCL連盟の事務所にお邪魔して、短波誌のバックナンバーをコピーさせてもらった。そうしてスペイン語のレポートを書き、昨年初めて南極R.Nacionalに対して送ってみた。そしてその返信が昨日届いた。南極の受信を確認してもらったという嬉しさはもとより、スペイン語レポートが何とか使えたということもそれ以上の喜びであった。

 もうひとつの工夫として最近始めたことは、レポートに書ける要素がちょっと薄いなという局に対しては、受信音を同封することである。その昔はカセットテープしか考えられず、かさばるししかも1本数百円するし、その分送料も高くなるしと大変だった。しかし今なら受信音をMP3に変換して、FDに入れて送るという芸当も可能である。最近は専らこれを同封して、受信の証明をするようにしている(こう書きながら気づいたのだが、音声ファイルだけはメールで別送しても良いかもしれない。そうだ、それがいい!)。

 いろいろと入門者的なことも書いたが、同じような悩みを持っている人は少なくないと思ったので、恥ずかしながら自分のこれまでの経験を書いてみた次第である。これによってもう一度ベリカードを集める楽しみを見出す方が出てきたら幸いである。

(Apr.15,2003)