リグの変遷については別項でも書いたのだが、その後にまたリグが増殖していくという現象が発生した。と書くと他律的で自分に責任がないように聞こえるが、何のことはない、自分で好き好んで増やしたのだから自分の責任である(笑)。もう買うまいと思いながら、欲望の炎を消しきれなかったのである。

そもそもそんなに沢山台数があっても、人間は同時に何台ものラジオを聞くことは出来ない。純粋にDXというだけであれば実は535と7030で事足りてしまう。したがって昔からあるリグ(ICF-5900、FRG-7)、及び特別な用途を持ったリグ(ワイドバンド:MVT-7100、旅行用:ICF-2010)以外は実際には「観賞用」という意味合いに他ならない。そんな訳でここでは新たに購入してしまったリグについて少し記してみたい。

観賞用リグは4台であるが、これらが選ばれた理由は「昔の憧れの度合いが高かったこと」である。「リグ変遷~前編」でも触れたが、最初に憧れたのはCOUGAR2200と115、そしてSkysensor5900。どれか1台しか買えない訳なのでSkysensorを選ばざるを得なかったのだが、他の2台とも持てるものなら所有したかった。幸い給料をもらっている今なら、飲みに行くのを数回我慢すれば中古品は買えてしまう。そこでまずこの2台は目出度く入手することが出来た。

もう1台欲しかったのはPROCEED2800である。実はPROCEEDこそ私が最も憧れた機種だったのかもしれないと、最近思うようになった。それはPROCEEDがデジタル周波数カウンタを搭載した最初のBCLラジオであり、BCLブームの真っ只中に発売されて広告宣伝も鮮烈な印象を残したからではないかと思う。広告宣伝とはラジオCMで散々流れた「周波数の語呂合わせ」。「いいな向こうの生ビール(11765KHz DW)」とか「響くゴンゴンビッグベン(11955KHz BBC)」とかは今でも耳の奥底に記憶として残っている。また毎月買っていた「短波」の裏表紙にも毎月広告が掲載されていて、そこにも各局の周波数のデジタル表示とその語呂合わせが沢山載っていた。1KHz単位で周波数が赤いデジタルカウンタで表示される・・・。デジタルカウンタのついたリグなんてFR-101DDくらいしか知らなかった自分としては、それが自分の手の届く可能性のある価格帯であったことに、現実的な夢を感じたのである。そう、「赤いデジタル周波数カウンタ」は、私のBCLへの憧れそのものだったのかも知れない。

しかし残念ながらBCLラジオとしては画期的かもしれないが、本格的なDXを志向するとPROCEEDはスカイセンサー後の1台として選ぶ訳には行かなかった。90mbが受信できる点を除いては、スカイセンサーとの根本的な違いはない。所詮はBCLラジオである。だから次のリグにはFRG-7が選ばれたのである。そんな憧れからPROCEEDも飲みに行くのをもう数回我慢して(笑)手に入れることになった。

そしてICF-6800Aだが、これは完全に衝動買いである。本当はPROCEEDがあれば、「デジタル周波数カウンタ搭載のリグを所有するという」欲望は叶えられた筈である。しかしPROCEEDの入手に手間取っているうちに、たまたま知人から6800A放出の話が舞い込んだのである。6800に対する憧れももちろんあった。「短波」で連載されていた漫画「リグ・ログ・ラグ」の登場人物も「ロッパチ」と呼んでメインに据えていたのを覚えている。とは言え当時の自分はこのリグを買う気は全くなかった。それはもう既に自分がFRG-7を持っていたということと、やはり本格的なDXをやるのであれば通信機メーカーの機種しかないと決めていたためではないかと思う。実際に自分がBCLをリタイアする直前の79年には手の届く可能性のある通信型受信機としてTRIOのR-1000、80年にはYAESUのFRG-7700が発売されたが、6800は機種選定に当たって自分が最も重視した選択度と多信号特性が、これらの機種にかなわなかったからである。実際にカタログスペックもそうであるし、ダイナミックレンジに関する雑誌の評価も他の2機種の方が高く、6800はリスニング派向け、他の2台はDX向けという風に色分けされていた。要はヘビーなDXを志向する自分としては、他の2機種の方が魅力的に映ったということである。

実際には80年にBCL活動を停止してしまったため、次のリグを選ぶという行為はなされず、R-1000もFRG-7700もICF-6800も購入しなかった訳であるが、自分のBCL末期に出現した高級BCLラジオとして6800は記憶されており、当時では絶対買えなかったであろうラジオを自分の手元に置くことができる喜びで、「多少難あり、だから安く。」というお友達価格で譲って頂いたのである。

最後にICF-2010について触れておきたい。「ポータブル不朽の名機」という評価と85年発売機種が今でも新品で購入できるというノスタルジーとで、是非とも手に入れたいと考えた。日本では入手不可で米国であれば入手可能とのことだったので、Universalに発注した。ところが丁度生産ラインの休止(?)という悪いタイミングに入ってしまったのか、待てど暮らせど「Back Order」の状態が続き、11月に発注したのに4月になっても商品が届かない。しかもUniversalはそのあたりの事情を説明する訳でもなく、何も連絡がないまま月日が過ぎていく。そこで業を煮やして「この日までに出荷できなければキャンセルします」と通告したら、翌日「ご要望に従いキャンセルしました」と返信がきた(いい加減にしろっつーの)。仕方がないのでUniversal以外の入手先はないかと探す。SONY AmericaのSONY STYLEにはそもそも2010がカタログ表示されていないのでダメ。Groveにもない。これ以上の方法が思いつかず、思い余って知人の米国在住のDXer氏に相談したところ、氏は親切にもわざわざ探して近隣のショップで私のために代理購入して下さった。ということで無事10台目のリグが我がシャックにやって来た。

ノスタルジーの追求(&ストレス解消!)とは言え、今度こそ自分から主体的に購入しに行くということはしないと思う。あくまでも何かの理由で余程お買い得な条件でもない限りは、衝動買いすることもないと思う。

 (Apr.23,2002)