ALA1530は英国Wellbrook Communications社が製造、販売している長波~中波~短波用のループアンテナである。私がBCLを復活して受信機の実機を見に近所のハムショップに行って中古のNRD535を購入した際に、店主に「アンテナもどうですか」と奨められたのがこれだった。しかし自分の感覚ではループアンテナは中波DXのためのものであって、短波帯にはやはりワイヤーアンテナだろうという思いが強く、ほとんど興味を示さなかった。

 その後何人かのDxerのサイトでこのアンテナをレビューしているページを見かけたが、その評価としては「ノイズと混変調に強いがゲインは今ひとつ」というところに集約されるように感じた。従って引き続き1530に対する興味は湧かず、依然としてワイヤー系で優秀なアンテナを捜し求めた。

 さてDXを続けていく中で改めてアンテナの重要性を意識することになるが、特に感じたのは「ゲインよりもS/N比だ」ということであった。特に日本のように狭くて人工ノイズの多い国ではその重要性は際立つのではないかと感じ始めていた。そんなときに私のこのサイトにメールを下さったDxerの方が、私のアンテナに対する興味が強いことを知り1530に関するご自身のレビューを送って下さった。それによるとこのアンテナは極めて優秀であり、ハイゲインのバーチカルアンテナより受信できる局が増えたという結果が報告されていた。ここに至りさすがに私もこのアンテナに対して魅力を感ぜずにはいられなくなった。そこでついにこのアンテナを導入することを決心した訳である。

 発注に際しては例のごとく個人輸入の楽しさを知ってしまったので、英国の本社に直接発注することにした。方法としてはメールにて最新の価格と送料を照会し、次に郵便局より為替にて同社に送金した(身分証明が必要になるので注意!)。先ほどのレビューによれば代金を受領した時と商品発送時にはそれぞれメールで連絡があったと書いてあったのでそれを待っていたが、3週間近くたってもなしのつぶてであったので少々焦り、メールにて問い合わせをする。すると翌日に返信があり「代金は受け取っており商品も昨日発送した」とのこと(おいおい、皆と同じように対応しろっつーの)。

 さて言葉通りにアンテナは発注後3週間で我が家に届いた。そして早速受信機につなごうとするが・・・ここからが苦労の始まりだった。実際に使用に供するための準備作業が多過ぎて、不親切この上ない製品なのである。不親切は以下の3つの点である。

①     アンテナ~コントロールボックスをつなぐ同軸ケーブルのコネクターが何とBNCであり、ユーザーは自分で同軸ケーブルを加工して準備しなければならない。コントロールボックス~リグ間もBNCのため、リグとの接続には変換プラグが必要となる。

②     コントロールボックスにはDC12Vの安定化電源が必要となるが、付属品にはコントロールボックスに差し込む「プラグ」しか付いておらず、これまた加工が必要である。

③     極めつけは取付金具である。「こういったものをこういう寸法で作れ」という指示は書いてあるだけで、これまた準備しなければならない。しかもそんな金具はいくつかのDIYショップ、金物店を回ったがどこにも売っていないのである。

①は何とかなったが早速②でつまづいた。自分でコードを作って安定化電源から電源を取ったが、何故か電気が流れない(工作ミスでショートしていたようである)。従ってアンテナは作動せず、同軸なのか電源なのか原因の切り分けから頭を悩ませねばならなかった。そこで前出のDxer氏や他のユーザー氏にも救いの手を求めてアドバイスを請う羽目に陥った。そして電源について、ACアダプタでも問題無いようであると聞き、7030のアダプタを(こいつも英国製!)試しにつないだところ・・・ビンゴー!であった。見事にアンテナは作動し、受信機からはさまざまな局が聞こえ始めた。そこで早速秋葉原に行ってジャンクショップで規格に合うACアダプターを見繕い購入した。

仮設置だったがまずまずパフォーマンスは良いようである。よしっ、と次にはこいつをきちんと設置するべく準備を始める。しかし取付金具が無いのである。いろいろ考えた末たどり着いたのは、既製の金具を諦めオリジナルの物を作ることにしたこと。しかし自分で作るには道具も無く無理なので、近所のホームセンターの工作室に加工を依頼することにした。2mm厚のアルミ板に自分でけがきをして作ってもらおうと考えた。しかしホームセンターでは加工できないとのことで、この点に関しては今だ暗礁に乗り上げている。

ここまでの諸経費は(同軸ケーブルは仕方ないとして)変換プラグ1,400円、ACアダプター500円、取り付け金具2,360円(ループ上部固定のためのデベマウント1,400円、アルミ板960円)の計4,260円。経費はともかく要した時間と労力はばかにならず、こんなもの最初からつけて置けよ!とかなり腹立たしくなった。

そしてやっとの思いで自宅にマウントし改めてパフォーマンスを見ると・・・よしっ!苦労した甲斐があった。非常に素晴らしいパフォーマンスである(詳細はアンテナの研究レポート④を参照されたい)。

苦労を掛けた子ほど可愛いと言うが、手を焼かせただけにこのアンテナに対する思いは結構強くなった気がする(メーカーに対しては未だに怒りが解けないが・・・)。

ちなみに国内のショップで代理店経由で購入すると価格は若干高くなるが、また別料金だがACアダプタも取付金具も購入できるようである。面倒を厭う方は絶対にそちらをお奨めする次第である。